横山雅彦のロジカル・リーディングとは

 ロジカル・リーディングとは、横山雅彦が独自に体系化した英語読解法です。それまでの大学受験では、「パラグラフ・リーディング」という方法が主流でした。筆者の「イイタイコト」=「主題文」に注目し、その「理由付け」=「リーズニング」を分析する読解法です。

 しかし、それはただ、洋書を翻訳して紹介しただけのもので、あくまで「アメリカ人による、アメリカ人のための」方法論でした。たとえば、「なぜその文が主題文になるのか」、「イイタイコトの定義は何か」となると、まったく曖昧で、日本人が使うには決定的に不向きなものだったのです。

 ロジカル・リーディングは、英語ネイティブの世界で「何がイイタイコトになるのか」を明確にし、パラグラフ・リーディングの盲点を補う英文読解法です。そのキーワードをひとことで言い表すなら、「心の習慣」ということになるでしょう。

 英語ネイティブと話したことがある人なら誰でも、こちらが何か言う度に、“How?”とか“Why?”と聞かれて、閉口した経験があるはずです。英語ネイティブの世界と日本語ネイティブの世界では、無意識的な思考法、すなわち「心の習慣」が違うのです。

 英語の「心の習慣」こそ、「ロジック」です。今でこそ、ごくあたりまえに「論理」という言葉が使われていますが、これは“logic”の訳語として明治時代に生まれた新造日本語です。つまり、明治以前の日本に「論理」は存在しなかったのです。

 英語の「ロジック」を、もっともわかりやすく表したのが、ディベートで用いられる「三角ロジック」であり、ロジカル・リーディングは、それを英文読解に応用したものです。ロジカル・リーディングがはじめて公開されたのは、1990 年代初頭のことです。噂が噂を呼んで、教室は常に満席、夏期講習や冬期講習は、ただちに締め切りを出す幻の講座になりました。その様子は、この時期に出版された一連の『私の大学合格予備校作戦』(エール出版)に詳しく取り上げられています。

 このように、知る人ぞ知る講座であったロジカル・リーディングですが、1998年に『横山英文速読入門講義の実況中継』、次いで 2000 年に『横山ロジカル・リーディング講義の実況中継』が出版されると、たちまち大ベストセラーとなり、大学受験における英語長文読解分野に一大革命をもたらしました。

 そして、2001 年には、『横山ロジカル・リーディング講義の実況中継 実戦演習①客観問題の解法』『横山ロジカル・リーディング講義の実況中継 実戦演習②記述問題の解法』が出版され、いわゆる「ロジカル三部作」が完結します。 ロジカル・リーディングの「論証責任」や「同形反復・反転反復」の考え方は、今では英語のみならず、現代文や小論文の指導においても、まるで昔からあったかのように使われるようになりました。「三角ロジック」も、論理思考を扱う際の定番となりましたが、現在世に出回っているその解説のほとんどすべてが、その解釈や具体例も含めて、横山雅彦のロジカル・リーディングの模倣です。

 また、2002年度から2009年度まで、文部科学省が主導し、高校における先進的な英語教育を研究した SELHi(スーパー・イングリシュ・ランゲージ・ハイスクール)の取り組みでも、ロジカル・リーディングの方法論は注目され、2006 年に出版された『高校生のための論理思考トレーニング』(ちくま新書)は、渋谷教育学園渋谷中学高等学校など、いくつかのSELHi指定校で、参考図書として採用されました。

※横山雅彦のロジカル・リーディングは登録商標です。