現在、大学入試の世界では、英語試験の「4技能化」推進の動きが大きくなっています。従来の「読み書き」と同じくらい、「聞き話す」に重きを置こうとするものです。それが、「グローバル化への対応」を大義名分とする文科省の英語教育改革(小学校での英語必修化、中学高校での英語の授業のオールイングリッシュ化など)、あるいは一部企業による社内英語公用語化と連動するものであることは、論を待ちません。他方、知識人を中心に、「英語化は愚民化を招く」という議論も、同じくらいの高まりを見せています。果たして、日本人は、どのように英語と向き合い、英語を学べばいいのでしょうか。
実は、日本人の「英会話」信仰、「実用英語」神話は、何も目新しいものではなく、終戦直後のGHQ支配下にあって放送を開始したNHKラジオ英語会話以降、ずっと続いてきたものです。学校英語においても、オーディオ・リンガル・アプローチ(ミシガン・メソッド)やコミュニカティブ・アプローチなど、スピーキング重視のさまざまな教授法が試みられてきました。
しかし、実際には、明治以降、日本人の英語学習のあり方は、何ひとつ変わっていません。結局のところ、「英語名人」と呼ばれる人たちが実践してきた方法は、「英文法」を大切にし、正しく「読み書き」を習得すること──それだけです。そして、それは、これからも変わることはないでしょう(その背景には、日本独自の近代化があります)。つまり、「英文法」と「読み書き」を中心とする受験英語こそ、日本人にとっての正しい英語修得への唯一最短の道なのです。受験を通じて学んだ英語が、実用に生かされないのは、ただ、「正しい方向性と筋道」を与えられていないからです。
僕が予備校の教壇に立ったのは1991年のこと、それまでにECC外語学院で英会話を教えた6年を合わせれば、都合30年の長きに渡って、英語教育に携わってきました。この本には、そこで培った英語学習法のすべてが記されています。予備校に通うことなく、いかに大学入試を突破するかの具体的な方法を開示しながら、その向こうにある本当の実用英語への橋渡しを試みました。どうか、ご一読いただければ幸いです。
- 新書: 208ページ
- 出版社: 筑摩書房 (2015/11/5)
- ISBN-10: 4480689478
- ISBN-13: 978-4480689474
- 発売日: 2015/11/5
2015年11月26日の日経新聞夕刊「目利きが選ぶ3冊」に、『完全独学! 無敵の英語勉強法』が掲載されました。
選者は、経済評論家の中沢孝夫先生(福山大学教授)で、星4つ(読むべし)を頂戴しています。
誤植訂正のお知らせ
『完全独学! 無敵の英語勉強法』の第1刷に、以下の通り、誤植がありました。謹んでお詫びし、訂正させていただきます。
132ページ 8行目
(誤)more than
(正)less than
132ページ 9行目
(誤)以上
(正)以下
第2刷以降では訂正されています。